食物繊維と「腹持ち」の科学― 水溶性食物繊維による満腹感向上の可能性 ―
食物繊維は、満腹感をどう変えるのか?

忙しい日々の中で「腹持ちがよい食品」は、多くの人にとって魅力的な選択肢です。とくに水溶性食物繊維は、食後の満腹感の維持や摂取カロリーの抑制に寄与する素材として注目されています。
近年の研究では、水溶性食物繊維の種類によって、生理的な作用が異なることが明らかになってきました。
オートミールに含まれるβ-グルカンの満腹感効果に注目

Sallehらの研究(2019)では、複数の水溶性食物繊維を用いて満腹感とエネルギー摂取量への影響を比較した結果、以下のような知見が得られました(*1)。
- グアーガムとβ-グルカンを摂取した群では、食後のエネルギー摂取量が有意に低下
- これらの繊維は胃の内容物の排出を遅延させ、結果として満腹感が長く持続する
これにより、摂取カロリーの自然な抑制が期待できると報告されています。
機能性素材としての可能性

水溶性食物繊維は、水分と結合して粘性のあるゲル状構造を形成することで、胃から腸への排出を緩やかにします。この働きが「食後の急激な空腹感の抑制」や「間食の予防」につながると考えられています。
特に以下のような用途での応用が期待されます:
用途 | 機能性のねらい |
ダイエットサポート食品 | 食後の満腹感持続、摂取カロリーの自然な抑制 |
糖質制限食 | 血糖値の上昇抑制+腹持ち向上 |
朝食・代替食 | 長時間のエネルギー持続 |
オリゼの取り組みと展望
ORYZAEでは、米由来の発酵素材を活用し、自然由来で高機能な食品設計に挑戦しています。現在、水溶性食物繊維や発酵由来多糖体(例:β-グルカン様成分)を含む素材を活かしながら、
- 腹持ち効果の検証
- 糖質吸収抑制との相乗効果評価
- 腸内環境への影響調査
といった視点で、研究と製品開発を進めています。
まとめ
水溶性食物繊維の種類は、私たちの「満腹感」に大きく影響を与える可能性があります。
特にβ-グルカンなどの成分は、ダイエットやウェルネスフードへの応用が期待される注目素材です。私たちは、自然の力を活かしながら、科学的根拠に基づいた“腹持ちの良い食品”の開発に挑戦しています。
1: Salleh, S.N., et al. (2019). Effects of different soluble fiber types on postprandial satiety and subsequent energy intake in healthy individuals: A systematic review of randomized controlled trials. Foods, 8(1), 15. https://doi.org/10.3390/foods8010015